「来月の会議でAI活用の成果を見せて」と頼まれた。普段の仕事は減らず、比較するツールのタブだけが増えていく。 僕が開発・運営するVibelyも、最初はShiftBの社内ツールで、教材管理、受講生のブログ投稿、進捗管理から始めました。身近な仕事を形にしてから、外部向けのサービスへ広げています。
社内のAI推進も、対象業務と確かめ方を決め、動くものを小さく作るところから始められます。この記事では、開発チームを持たない営業・企画・事務の担当者向けに、業務の棚卸しから試作、効果測定、同僚への引き継ぎまでを30日の計画例にします。日数は成果の保証ではなく、相談と作業を区切る目安です。
手順1:最初に上司とAI推進の範囲を決める
1〜3日目:月末に見せる成果物を具体化する
「AI活用を推進する」だけでは、調査を続けるのか、研修を開くのか、業務を変えるのかが定まりません。 最初の打ち合わせでは「申請一覧から未対応だけを抜き出す試作品と、導入前後の作業記録を見せる」のように、対象と成果物を決めます。担当者が実演できて、続けるかやめるかを上司が判断できる状態が、今回の到達点です。
全社のルール作りや全員への展開まで一度に引き受けると、兼務の担当者は作る時間を確保できません。自分が試作する範囲、上司が決める予算と作業時間、情報システム担当へ確認するデータの扱いを分けて書きます。社内に専門担当がいなければ、利用を承認する責任者に相談窓口を決めてもらいます。
上司には「通常業務のどれを調整して、この試作に時間を使うか」も確認してください。空いた時間で進めるという合意では、締め切りだけが残ります。承認に時間がかかる場合は、月末の報告を架空データによる実演までにするなど、成果物の範囲を先に調整します。
使う道具より先に、使えるデータと責任者を決める
試作に使うサービス、入力してよい情報、出力の確認者、困ったときの停止・相談先を短いメモにします。例えば「会社で承認されたアカウントを使う。初回は架空データのみ。結果は業務担当者が確認し、実際の申請台帳には書き戻さない」という範囲です。担当になったことと、社内情報を外部サービスへ渡す権限を得たことは別です。
Claude Codeの公式のデータ利用説明では、個人向けと商用契約でモデル改善へのデータ利用条件が分かれています。商用契約でも、データ提供を選ぶ仕組みがあります。「有料だから何を入れてもよい」と判断せず、会社の契約・設定・利用規程を確認します。手元で動くツールにも外部通信があるため、ローカル作業だけを理由に機密情報を渡さないでください。

手順2:自分で正解を確かめられる1業務を選ぶ
4〜7日目:業務名ではなく、繰り返す操作を書く
棚卸しでは「営業」「総務」のような大きな単位を避け、「一覧を開く→未対応を探す→担当者別に並べる→確認して共有する」と、普段の操作を順に書きます。各操作に、入力元、判断条件、完成品、やり直しが起きる理由を添えます。担当者本人が迷うルールは、AIへ渡す前に決める対象です。
「申請管理を全部自動化したい」なら、まず未対応の抽出だけに絞ります。申請の承認、催促メール、台帳更新は外します。見た目を整えるだけでは痛みが残るので、今いちばん繰り返している操作を残してください。僕がよく伝える「ビタミン剤よりも鎮痛剤を作れ」は、社内向けにも当てはまる考え方です。
選ぶ基準は、自分が正解を説明できること、同じ処理が繰り返されること、失敗しても元の手順へ戻せることです。採用の合否や契約の可否など、判断の責任が重い業務は最初の題材から外します。顧客ごとに例外が多く、担当者も理由を説明できない業務は、試作の前にルールを整理する必要があります。
作る前の時間と、残す作業を記録する
元のやり方で作業し、準備、抽出、確認、修正にどれだけ時間を使ったかを記録します。件数やデータの状態も残してください。少ない件数の新しい方法と、大量の件数を扱った従来の方法を比べても、何が改善したのかは分かりません。比較用の同じ入力と、手作業で確認した正解を保存します。
最初のつまずきは、日常業務と試作の範囲がずれることです。担当者への共有までを普段の仕事として測るなら、試作でも確認と共有にかかる時間を含めます。AIが一覧を出すまでだけを測って「速くなった」と結論づけないよう、測定の開始点と終了点をメモに書いておきます。
ここまでに必要なのは、入力、抽出条件、正解の例、確認者、元へ戻す方法です。これを書こうとして手が止まるなら、道具の知識より、仕事をどこで区切るかが課題です。AIシフトコースの無料相談会では、自分の仕事を題材に「何を作るところから学ぶか」を整理する入口にできます。
AI時代のアプリ開発コース
ShiftBのAIシフトコースは、Claude Codeで本格的なWebアプリケーションを作りながらAI駆動開発を身につけるコースです。ただ作って終わりではなく、コードを読め、セキュリティに責任を持って提案でき、要件定義などの上流工程まで担えるところまで現役エンジニアがサポートします。
AIシフトコースを見る →手順3:架空データで動くものを1つ作る
8〜14日目:まず完成条件を日本語で渡す
Claude Codeは、会話に沿ってファイルを読み、編集し、コマンドを実行できる開発ツールです(公式の概要)。会社で利用が認められている場合は、業務用の原本と分けた空のフォルダで始めます。導入の操作はClaude Codeの使い方にまとめています。
悪い依頼は「申請管理をAIで便利にして」です。何を承認し、誰へ送るのかまでAIが補ってしまいます。良い依頼は、入力、出力、除外する操作、成功条件を指定します。公式のベストプラクティスでも、具体的な文脈と検証方法を渡すことが勧められています。次は架空の練習用データだけで試す依頼例です。
架空の申請一覧から、未対応の行を抜き出す試作品を作りたいです。
まず実装せず、入力と完成条件を確認して計画を説明してください。
入力:申請ID、担当、状態の3列を持つCSV(表を文字で保存する形式)。
状態は「未対応」「対応済み」のみ。未対応の行を担当ごとに並べて表示。
件数も表示する。同じ申請IDがある、必須欄が空、未知の状態がある場合は、
成功扱いにせず理由を表示する。元のデータは上書きしない。
実データ、外部送信、ログイン、台帳への書き戻しは今回の対象外。
入力画面、結果画面、エラーの確認方法を提案してください。
正しい一覧と、止まるべき入力を先に用意する
練習用の申請は5件にします。A01は担当甲・未対応、A02は担当乙・対応済み、A03は担当甲・未対応、A04は担当乙・未対応、A05は担当甲・対応済み。抽出されるIDはA01・A03・A04で、未対応は計3件、担当甲が2件、担当乙が1件です。これは説明用に作った架空データで、実際の社内記録ではありません。
別の練習ファイルではA01を重複させ、さらに別のファイルでは状態を空欄にします。どちらも正常な一覧を出す代わりに、理由が表示されることを確かめます。該当なしと処理失敗が同じ「0件」になると、利用者は見落とします。未対応がない正常な入力では「未対応なし」と表示する、と区別して伝えます。 列名が「状態」から「対応状況」に変わった場合も、黙って読み飛ばすのではなく入力の違いを知らせる設計にします。使う人が修正できる案内まで含めて完成です。
AIに修正を頼むときは「動かない」ではなく「A02が結果に入った。対応済みなので除外してほしい」と、入力と期待結果の差を示します。画面だけを直して判定が変わっていないこともあるので、変更後は同じ練習データで確かめ直します。題材の選び方から制作を追いたい場合は、業務アプリを作る手順も使えます。
「送信しない」という依頼と、実際の制限を分ける
依頼文に禁止事項を書くだけでは、アクセス権は制限されません。Claude Codeの権限の公式説明は、プロンプトの指示とツールの許可設定を区別しています。会社で許可された範囲に設定を合わせ、読めるフォルダや外部接続を確認します。今回の依頼は、AIとの会話自体を外部通信なしにする指定ではありません。
最初の試作では、元の業務システムにつなぐための鍵や、顧客情報を置かずに進めます。ファイルがどこへ保存されるか、画面を閉じると何が消えるかもAIに説明させます。「ローカルで動く」という説明だけで判断せず、実データを使う前には社内の確認担当へ構成を見てもらってください。
手順4:確認・修正まで含めて効果を測る
15〜21日目:速さと正しさを別々に確認する
架空データで正解が出たら、社内で承認された範囲のデータで試行します。まだ承認されていなければ、架空データでの検証を続けます。元の業務手順も残し、同じ入力に対する結果を照合してください。数字が違う場合は機能を増やさず、抽出条件、重複、空欄の扱いまで戻って確認します。
効果測定では、処理時間だけでなく確認と修正も足します。以下は計算方法を示す架空の記録で、ShiftBや受講生の実績ではありません。同じ入力を扱い、作業を始めてから結果を確認し終えるまでを比べる想定です。
| 時間の内訳 | 従来の手順 | 試作を使う手順 |
|---|
| 準備・抽出 | 40分 | 15分 |
| 結果の確認 | 10分 | 12分 |
| 修正・やり直し | 5分 | 3分 |
| 合計 | 55分 | 30分 |
この例の差は25分ですが、初回の制作・設定に使った時間は含めていません。制作時間と、継続してかかる利用料・保守作業は別に記録します。速くても見落としがあれば採用できず、正しくても確認の負担が増えるなら、入力を簡単にするなどの見直しが必要です。
採用・修正・停止の条件を成果報告に添える
動画や画面を見せるだけでなく、「何を入力し、何が出て、人は何を確かめるか」を説明します。正常な例と、エラーで止まる例を並べて見せれば、使える範囲が伝わります。例外が出たときに担当者が毎回コードを修正する必要があるなら、その負担も成果報告に含めます。
判断を急がないため、入力条件を満たすのに誤った結果が出る、無断の外部送信が見つかる、復旧方法を説明できない場合は利用を止める、と先に決めます。単に使われなかった場合も、操作が難しいのか、そもそも困っていないのかを確認します。使う人数だけを増やして解決したことにしないでください。
上司への報告は「対象業務/変更した操作/正解との照合結果/確認込みの時間/残った問題/次に判断してほしいこと」を短くまとめます。改善しなかった場合にも、どの条件で使えなかったかが残れば次の題材を選べます。承認が未完了なら、検証済みの範囲と実運用の範囲を分けて報告します。
手順5:同僚が使える手順にして引き継ぐ
22〜30日目:同僚に操作してもらい、説明が足りない箇所を直す
展開前に、同じ業務を知る同僚に手順書と練習データを渡します。作った本人が横から操作を代わらず、どこで迷うかを見ます。開き方、入力ファイルの選び方、結果の見方、エラー時の戻り方を補い、担当者が休んでも困らない状態に近づけます。アカウントは共有せず、会社で認められた方法で利用権限を用意してください。
AIへ伝える業務ルールと、人向けの操作手順は分けて残します。Claude Codeでは、プロジェクトの指示をCLAUDE.mdというファイルに書いて継続して参照させられます(公式のメモリ説明)。そこには入力の条件や確認方法を書き、人向けの手順書には保存場所と連絡先を記載します。ルールを変えたときは、正解の見本も更新します。
自分では使えても、同僚に「この結果が正しい理由」を説明できない。そこで必要になるのが、データの扱い、条件による分岐、エラーの読み方といった基礎です。作ったものを仕事で使い続けたい段階では、自分の題材を動かしながら中身を理解する学び方が、次の一歩になります。
AI時代のアプリ開発コース
ShiftBのAIシフトコースは、Claude Codeで本格的なWebアプリケーションを作りながらAI駆動開発を身につけるコースです。ただ作って終わりではなく、コードを読め、セキュリティに責任を持って提案でき、要件定義などの上流工程まで担えるところまで現役エンジニアがサポートします。
AIシフトコースを見る →次の月は、同じ仕組みを維持できる範囲で広げる
月末には、試作品、使える入力の条件、正解の見本、作業記録、操作手順をまとめます。次の業務へ広げる前に、現在の仕組みを直す担当者と更新の判断者を決めてください。人が変わる、列が増えるなどの変更でも、以前の正解を使って確かめられるように残します。30日で全社へ展開できなくても、この単位が引き継げれば次の判断ができます。
Excelの集計が題材ならExcel作業のAI自動化へ進めます。開発チームの導入を扱う場合は、AI駆動開発をチームに導入する方法で、開発者のレビューや組織の運用を確認してください。最初に取りかかるのは、今週繰り返した作業をひとつ書き出し、完成品と確認者を決めることです。