なぜWebは大規模でも安定動作できるのか?REST設計思想の秘密
投稿日: 2025年06月07日
前回は、WEBとは何か?について以下の記事を書きました。
今回は、WEBがこんなに大規模でも安定して動作している仕組みについて書こうと思います。
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Web はハイパーメディアであり、数千万ものサービスを抱える大規模な分散システムです。
多数の開発チームが独自に機能を追加し、サーバーやネットワークを増強しながらも、全体として安定して動作を続けられているのはなぜでしょうか。
その答えのヒントとなるのが、Web の設計思想のひとつ「REST」です。
図1に示すように、**REST** は最上位の「アーキテクチャスタイル」レイヤーに位置します。
その下の「アーキテクチャ」ではHTTPやURIといった仕組みが動き、
さらに下の「実装」ではApacheや各種ブラウザなど具体的なソフトウェアが動作しています。
システムをつくるときには「どう分けるか」「どう連携させるか」という設計ルールが必要です。これをまとめたものが アーキテクチャスタイル です。
たとえば:
- MVC
画面(View)、処理(Controller)、データ(Model)をそれぞれ独立させ、別のチームでも開発・テストしやすくする。
- パイプ&フィルタ
データ処理を小さなステップ(フィルタ)に分け、それをつなぐパイプで柔軟に組み合わせる。
- イベントシステム
操作やバックグラウンド処理をイベントとして扱い、非同期に割り振ることで応答性を向上させる。
これらを適用すると、UI(フロントエンド)、ビジネスロジック(バックエンド)、データベースといった異なる役割を持つコンポーネントを、統一的かつ独立に開発・運用できるようになります。
Web 全体を支えている代表的なアーキテクチャスタイルが REST(Representational State Transfer) です。
REST はまず クライアント/サーバ という基本構造を前提にしています。
1. クライアント/サーバの分離
- ブラウザなどのクライアントは「画面表示と操作」を担当し、
- Web サーバは「データ保存と処理」を担当します。
この分離により、それぞれを 負荷に応じて処理能力を増強 したり、
障害が起きたときに影響範囲を限定したりできるようになります。
2. アーキテクチャスタイルとしての制約
REST は「クライアント/サーバ」に以下の制約を加えたものです。
- 制約を守ることで、複数のサーバやネットワーク機器を組み合わせても、全体として予測可能かつ効率的に動作します。
- 各制約(ステートレス、キャッシュ可能、層化システム、統一インターフェース、ハイパーメディア)
各制約の詳細については、次回以降で書きます。
- 共通の設計ルールを維持
個別サービスが独自ルールで動いてしまうと、変更やトラブル対応がチームごとにばらばらになり、運用コストが急増します。
- 拡張性と安定性の両立
制約により各コンポーネントが自己完結し、障害の局所化やキャッシュ活用が可能に。
アクセス増加時も部分的なスケールアップで対応できます。
- 進化的な API 管理
共通インターフェースと自己記述的リンクで、バージョン管理や新機能追加がスムーズになります。
このように、Web が大規模でも安定して動作できる背景には、REST という設計思想と、
そこから導かれる一連の制約・ルールがあるからです。
次節では、REST の各制約を順に詳しく見ていきましょう。