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AnthropicがCommerce Agents公開 — 買い物エージェントの設計図とClaude Codeプラグイン【2026年9月最新】

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AnthropicがCommerce Agents公開 — 買い物エージェントの設計図とClaude Codeプラグイン【2026年9月最新】

2026年9月2日(米国時間)、AnthropicがClaudeでECの買い物エージェントを作るための設計図「commerce agents」を公開しました。僕はVibelyというオンラインスクール向けSaaSを1人で開発・運営していて、顧客対応をどこまでAIの仕組みに渡すかは日常的に向き合っているテーマなので、本番運用を想定した参照実装がまるごとApache 2.0で公開されたと知って、その日のうちにリポジトリを開きました。

この記事では、公開されたブループリントに何が入っているのか、設計思想のどこが自分のプロダクトに持ち帰れるのか、Claude Codeプラグインで試す手順までを一次情報で整理します。内容は2026年9月3日時点の公式発表と公式リポジトリに基づきます。

この記事を書いた人:立川修平(ぶべ)

  • ShiftB(AI駆動開発スクール)校長。非エンジニアの受講生のAIシフトを伴走
  • Claude Codeを毎日数時間使い、Vibelyなど自社サービスを開発・運営するヘビーユーザー
  • AIエージェント・AI駆動開発の最新動向と実務への影響を毎日発信

Commerce Agentsとは — 9月2日公開、「動くコード」で配られた設計図

ショッピングとマーチャント、2つのエージェント

公式発表によれば、公開されたのは2種類のエージェントの参照実装です。1つは買い物客向けのショッピングエージェントで、カタログ検索、商品比較、複数商品のプラン提案、カート操作、注文追跡、返品ポリシーなどへの質問対応、顧客の好みの記憶までを担当します。もう1つは店舗運営者向けのマーチャントエージェントで、売上分析、在庫アラート、価格やプロモーションの提案、マーケティング文面のドラフト作成を行います。マーチャント側の書き込み操作はすべて「人間が承認するまで保留」になる設計です。

コードはGitHubのanthropics/commerce-agentsにApache 2.0ライセンスで公開されており、共通ライブラリを含む7つのPythonパッケージで構成されています。動作要件はPython 3.11以上とNode 22。デモに入っているデータはすべて架空のブランド「ACME」のもので、実際の取引は発生しません。位置づけはあくまで参照実装で、継続的なメンテナンスや外部からのコントリビュート受け付けは行わないと明記されています。

同じ定義が3つの実行形態で動く

構成として特徴的なのは、エージェントの定義を1回書けば、Messages API(自前で制御ループを組む形)、Claude Agent SDK、Managed Agents(Anthropicがホストする形)の3つの実行形態でそのまま動くよう設計されている点です。デプロイ先もClaude APIのほかAmazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI、Microsoft Foundryに対応します。デモは小売・旅行・通信・チケット販売の4業種分が用意されていて、それぞれの商流の癖まで実装されています。

業種デモ実装されている商流の癖
小売(retail)検索・比較・プラン提案・カート・チェックアウト・顧客記憶
旅行(travel)日付つき在庫、旅程プランニング、稼働カレンダー
通信(telecom)契約者コンテキスト、料金プラン表、規制対応の手数料開示
チケット(entertainment)時間制限つきの座席ホールド、キャンセル待ち、譲渡、会場マップ

設計思想 — サブエージェントより「スキル」、安全柵は「コード」

単一エージェント+スキル構成が品質で勝った

同日に公開された設計解説が、このブループリントのいちばんの読みどころです。まず全体構成について。役割ごとに複数のサブエージェントへ分担させる設計と、1つの巨大プロンプトに全部を詰め込む設計を比較した結果、「単一のエージェントにスキル(必要なときだけ読み込まれる手順書)を持たせる構成が、品質で一貫して両者を上回った」とされています。よく使う能力はシステムプロンプトに置き、たまにしか使わない能力はスキルへ逃がしてトークンを節約する分担です。

ツールの設計方針も明快です。検索・決済・在庫といったドメインロジックはエージェント内に再実装せず、既存システムのAPIを呼び出すだけにする。使うモデルは評価スイート全体を候補モデルで回して決めるやり方が推奨されていて、目安として消費者向けの対話にはSonnet、マーチャント側の分析にはOpusが挙げられています。

安全柵はプロンプトではなくコードで縛る

僕がいちばん唸ったのはガードレールの章です。「プロンプトで言い聞かせる」のではなく、コードで物理的にできなくする方向で統一されています。具体的には4点。書き込み系の操作はすべてステージングされ、承認は既存の業務フローを通す。書き込みや画面表示に使えるIDは、そのセッション中にサーバーが返したものだけに制限する。レビューや出品情報のような第三者コンテンツは、モデルに渡す前にサニタイズ(無害化処理)する。書き込みはセッションごとに直列化して、並列のツール呼び出しで取引上限を突破できないようにする。プロンプトインジェクション(データに紛れ込ませた指示文でAIを操る攻撃)への対策として、ECに限らずそのまま自分のプロダクトに持ち帰れる内容です。

評価は会話シミュレーションよりスナップショット

品質保証の章も実務寄りです。ユーザー役のAIと会話させて採点する方式ではなく、障害が起きる直前の状態(長く散らかった履歴や矛盾した指示を含む)を切り出したスナップショット型のテストケースを、ユーザーフローごとに50〜100件用意する方式を推奨しています。顧客の記憶は、会話後に別スレッドが事実を抽出してデータベースへ書き込む非同期設計で、ツールでその場に書き込む方式より事実の想起が13%高かったという数字も示されています。プロンプトキャッシュのヒット率は90〜99%まで到達可能とされており、この水準はFable 5.1で75%値下げされたキャッシュ読み取り料金と掛け算で効いてきます。

commerce agentsブループリントの全体構造図(2つのエージェント・スキル・ガードレール・3つの実行形態)

ここに並んでいる設計判断は、スキル分割も、ID検証も、評価ケースの作り方も、どれも「作って、失敗して、直した」跡が見えるものです。読み解いて自分の業務に落とせる人と、コードの羅列にしか見えない人の差は、AIの知識量ではなく「動くものを一度でも作った経験」の差だと、受講生を見ていて感じます。

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Claude Codeプラグイン「commerce-builder」で試す

インストールすると4つのコマンドが増える

このブループリントは読むだけの資料ではなく、Claude Codeのプラグインとして自分のプロジェクトに適用できます。インストールは2行です。

claude plugin marketplace add anthropics/commerce-agents
claude plugin install commerce-builder@claude-commerce-agents

追加されるスラッシュコマンドは4つ。/scaffold-commerce-agentは自社のシステム構成に合わせたエージェントの骨組みを生成し、/add-commerce-flowは既存エージェントに商流を追加、/author-commerce-evalsは評価ケースを作成、/review-commerce-agentは手持ちの実装をレビューします。評価作成コマンドには、前章のスナップショット型評価の考え方がスキルとして組み込まれているので、EC以外のエージェント開発でも評価設計の参考になります。

デモを手元で動かす

公式リポジトリのデモは、次の流れでローカルに立ち上がります。

git clone https://github.com/anthropics/commerce-agents.git
cd commerce-agents
python3 -m venv .venv && source .venv/bin/activate
pip install -r requirements.txt
cp .env.example .env   # ANTHROPIC_API_KEYを設定
(cd examples && npm ci)
python scripts/run_demo.py retail

最後のコマンドで、APIサーバーと小売デモのECサイトが手元のブラウザで触れる状態になります。--merchantを付ければ運営側ポータル、--allで両方が起動します。会話のたびに自分のAPIキーへ課金される点だけ注意してください。まず小売デモを短時間触って、エージェントがカートを組み立てる動きと、マーチャント側で変更が「承認待ち」に積まれる動きを見るのが、このブループリントの理解として近道です。

僕らへの意味 — エージェント設計の「型」が無料になった

数字と限界をセットで見る

公式発表には、エージェント経由の買い物体験を導入した企業顧客で「カートが最大35%大きくなり、買い物客が購入を完了する可能性が60%高くなった」とあります。Anthropic自身の発表値なので割り引いて読むべき数字ですが、米国ではホリデー商戦を前に、ECの現場へエージェントを入れる動きが実装レベルまで来ていることは読み取れます。

一方で限界もはっきりしています。これは製品ではなく参照実装で、メンテナンスされない前提のコードです。決済の実行はエージェントが握らず既存フローに流す設計で、自社の検索や在庫と繋ぐバックエンド部分は自分で実装する必要があります。クローンしたら明日からECにAIが入る、ではなく、正しい設計の型を写経できる、が正確な距離感です。

非エンジニアはここから読む

僕はVibelyの運営で、1日3時間かかっていた問い合わせ対応を仕組み化して30分以下にした経験があります。そのとき効いたのは高度なAIの知識ではなく、「どの作業を仕組みに渡し、どこに人間の確認を残すか」を、業務を知っている人間が決めることでした。今回のブループリントも同じで、スキルに何を書くか、どの操作に承認を挟むかを決められるのは、現場の商売を知っている人だけです。書き込みは承認まで保留にする、外から来たテキストは無害化してから渡す、という設計の勘所は、ECに限らず社内の業務エージェントを作るときもそのまま使えます。

ただ、この手の公式サンプルは「動かして眺めて終わり」になりがちです。受講生を見ていても、公開されたお手本を自分の業務の困りごとに引き寄せて、小さく作り直した人だけが仕事で使える武器にしています。眺める側から作る側に回るには、要件を言葉にしてAIに渡し、動くものを検証するという基本の型が先に要ります。

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まとめ — 作り方の正解が公開される時代

Commerce Agentsのポイントを整理します。9月2日に公開されたのは、ショッピングとマーチャントの2エージェントをMessages API・Agent SDK・Managed Agentsの3形態で動かせる参照実装で、4業種のデモとClaude Codeプラグイン付き。設計面では、サブエージェントより単一エージェント+スキル、ガードレールはプロンプトではなくコード、評価はスナップショット型で50〜100件、という判断がコードごと公開されました。

モデルの性能競争と並行して、「エージェントをどう組むのが正解か」という設計知見そのものが無料で配られ始めています。次の一歩としては、まずClaude Codeの使い方で環境を作り、この記事の手順で小売デモを動かしてみてください。エージェントに業務を渡すとはどういうことかが、ドキュメントを読むだけより一段深く体感できるはずです。

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AUTHOR

立川修平(ぶべ)

ShiftB 校長 / bubekichi inc. 代表

ShiftBを運営する株式会社bubekichiの代表。経理系SaaSの企業でエンジニアを経験後、独立・起業。複数スタートアップでリードエンジニアを務めながら、SNS発信がきっかけで2024年にShiftBを立ち上げる。現在は自社サービスも複数展開中。

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